今回はローバーミニのステアリングガタつきの原因としてメジャーな、ステアリングラックブッシュの交換をDIYでやっていきます。併せて車検で重要なステアリングラックエンドブーツも交換してしまいたいと思います(というかこの記事は3ヶ月下書きに寝かせたままだった・・・)。
ステアリングのガタつきというかアソビが大きくなってしまっていたつゆだく(うちのローバーミニ)。ガタつきの原因は多岐に渡りますが、つゆだくの場合はこれまで結構な距離を無修理で走ってきたので、特定1箇所の不具合ではなく広く摩耗が及んでいる可能性が高く(消耗品の正常な摩耗であって不具合ではない)、よってガタつきがなくなるまで1カ所ずつ改善を積み重ねていく方式をとっています。
修理作業が大変じゃない、あるいは交換部品の価格が安い箇所から順番に作業しているのですが、ここまではタイロッドエンドの交換(タイロッドエンドボールジョイント部分のガタつきを直すため)、それとステアリングラックそのものを車体に固定するU字ボルトの増し締め(部品交換ではなく固定の強化)を行ってきました。
アソビが小さくなったことでガタつきは改善してきているものの、まだステアリングはガタつきがあります。そこで今回はステアリングラック内にある樹脂製ブッシュの交換をしたいと思います。ここも”ステアリングガタつきの修理”としてはかなりメジャーというか、大きな原因となりやすい箇所で、現在の状態が悪ければ交換することによって大きな改善が期待できます。ただラックエンドブーツを外してみないとブッシュの状態がわからないため、まずは分解して状態を見てみないとなんとも言えません。
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交換部品代はブーツまで含めて7,500円ぐらい。ここはとにかくケチらず耐久性の高い日本製を選ぶべし。
今回用意しておく交換部品は2つです。
- ステアリングラックブッシュ(うちの97年式インジェクションミニは爪あり):日本製 1つ 2,090円
- ステアリングラックエンドブーツ:日本製VALTAIN 2つ 5,280円
ステアリングラックエンドブーツはガタつきに影響するものではありませんが、ドライブシャフトのブーツと同じようにゴムの劣化により破れが生じると、グリスが漏れたり内部に水分が入ったりして走行で重要なジョイント部分に錆が発生します。そして破れていると車検に通らないし、車検場ですぐその場で交換しやすいものではないので、万一車検でひっかかるとその日に車検が通せない可能性があり、めちゃ面倒なことになります。
ラックエンドブーツはステアリングラックブッシュを交換するためにいずれにせよ外す必要があるので、それなりの期間使用しているなら、ついでにセットで交換してしまうのが良いと思います。破れてから交換すると遅いタイプの消耗品ですし、こういった機会に外してみるとゴムの状態が確認しやすいというのもありますね。
真ん中の黒い蛇腹がブーツ、左下の黒い小さな部品がブッシュ、そして左の工具がバイスプライヤー、それに左上が清掃用のパーツクリーナー、あと上にあるのが床の汚れ防止に敷く紙です。
そしてめちゃくちゃ大事なことがひとつ。ブッシュもラックエンドブーツも共通なのですが、ここは高くても国産部品を購入することを勧めます。「今どきmade in Japanじゃなくても大丈夫でしょ」と思うかもしれませんが、大手メーカー車の量産部品はそうでも、生産量の少ないローバーミニの部品は今でもmade in Japanだと明確な品質差があります。各ミニ専門店でも”高品質国産品”としてわざわざ海外製(主に英国製)と分けて明記し販売しているぐらいです。部品代は物によっては倍近く高いですが、それでも交換の手間を考えたら(ショップに預けて交換してもらう人は工賃を考えたら)長持ちする国産品をつけたほうが結果安く済むと思います。それは特に今回の部品が樹脂製とゴム製だからです。これら素材の性質が耐久性を決めるものは日本製が強いです。
今回購入したのはどちらも国産部品ですが、ブッシュはJMSAステアリングラックナイロンベアリング(ツメあり高品質)で、ナイロン製で古くなっても割れる感じではないですね。非常に柔軟性の高い素材で、パキっと割れる感じではなく強い力をかけて変形させても元に戻るタイプの樹脂です。
「こんな小さい樹脂製の輪っかひとつで2,090円とかバカじゃねーの!?」
と思うかもしれません。僕は思いました。笑 それでも払う価値はあるので諦めて買ってください。僕は車体を分解していってみて、その価値を痛感しました。それは後ほど記載します・・・。
同じようにラックエンドブーツも国産品、VALTAIN製です。これは現在ついているブーツが同じくVALTAIN製なのを元々知っていて、僕がつゆだく(ローバーミニ)を購入してから一度も交換していないにもかかわらず未だにゴムの柔軟性を保ち、ヒビこそあれど破れていないという耐久性が保証されているからです。これも同じように、
「こんな蛇腹ゴム2つで5,280円もすんのかよ!!ホムセンでエアコンの太いホースが数百円で売ってるのになんでこれはこんなたけーんだよ!!」
と叫びたくなりますが、それでも国産品を購入する価値があります。とにかくミニのゴム製品は国産品を買え!というのが僕の経験です。
ついでにまだステアリングラックブッシュを交換するのに必要なものがあります。それはステアリングラックのタイロッド(のボールジョイントハウジング)を掴むためのプライヤーです。ここはレンチなどがかかる六角状になっておらず、よって円筒を強力に掴んで回すしかない部分なのでバイスプライヤーがないと分解ができません。
Amazonで1,400円ちょいと思ったより安価に手に入ります。僕が購入したのは安心の日本メーカーKTC製。あまりサイズが小さくてハウジングの直径と合わないと固定しづらくなるので、175Rのサイズか、もう少し大きいものが適しています。
まずはタイヤを外してハブを揺すり、ガタつきの原因にアタリをつける。今回はタイロッドからステアリングラック内部が怪しい。
さて作業開始。いきなり今回の作業とは関係ないのですが、(タイヤ交換前の作業だったので)タイヤはもう限界ですね。。最近のスポーツ走行で一気に消耗した感じがしていて、満遍なく薄くなっていってスリップサインが出ているのはもちろんですが、特にコーナーを攻めるようなことをすると車体外側部分の溝がかなり消耗します。これを見るとタイヤの外側に負担が大きいようなので、もうちょっとキャンバーつけたい気持ちになりますね・・・
それはさておきまずはサクッとホイールを外してリジットラック(ウマ)に乗せます。
ステアリングラック内のブッシュは片側のみで、助手席側に入っています。運転席側のステアリングラックエンドはどうなっているのか知りませんが、こちら側はラックアンドピニオン機構でステアリングコラムシャフトに繋がっていて、ブッシュを交換することはできないようです。よって今回の作業は助手席側、つまり右ハンドル車なら左側のフロントがメインの作業対象ですが、タイロッドを外す際に結構力がかかるので車体が動くリスクがあり、
- ジャッキアップではなく、両輪にウマをかける(片側作業でも両輪かける)
- 設置しているリヤタイヤが回らないよう、サイドブレーキがしっかり効いていることを確認する
は注意したいところ。作業的にはフロントからリヤ方向に力をかけるので、車体が動いてウマから落ちるとめちゃくちゃ危険です。。ブレづらいように(どうせ両側のタイロッドエンドを外すので)フロント両輪をサブフレームでしっかりウマに乗せるだけでなく、設置しているリヤタイヤが回転しないようにサイドブレーキがガッチリ効いていることも確認してください。
ウマに乗せたら(既にわかっていることですが)ハブをつかんでガタつき状況を確認します。ステアリング周りのガタつきは左右方向に揺すってみるとわかります。ガタつきがある場合は、どこがガタついているか見て原因を推測します。
- ハブはガタつくけどタイロッドは動かない:タイロッドエンドのボールジョイント摩耗が怪しい
- さらにタイロッドを掴んで奥手前方向に揺すると動く:タイロッドから奥、タイロッドのボールジョイントやブッシュ磨耗が怪しい
- さらにさらにステアリングラック本体(内部の軸ではなく外部のカバー)が動いてしまっている:ラックを車体に固定するU字ボルトが緩んでて危険なので、まずは増し締めして再度ガタつきチェックをする
という感じで大まかにアタリをつけてから修理します。色々交換部品購入して苦労して分解してみたら交換不要だったりすると悲しいですからね・・・。
ちなみに注意しなければいけないのがハブを上下方向に揺すってみたときに、上下にもガタがある場合。ハブとアッパー・ロワーアームを接続するボールジョイントの摩耗が怪しいですが、上下左右全方向にガタつきがある場合はそもそもハブベアリングが磨耗してドライブシャフトに対してハブ自体がガタついている可能性があり、その場合は他を直してもガタつきが直りません。このあたりはよく見極めが必要です。
分解に取り掛かる。まずはタイロッドエンドを外してからラックエンドブーツを抜き取る。
前置きが長くなりましたがいよいよ作業開始。まずはタイロッドエンドを外します。今回はラックエンドブーツを抜き取る都合上、タイロッドからタイロッドエンドと位置固定用のナットも抜き去る必要があります。
この詳細作業は以前のタイロッドエンド交換で記載しているので割愛しますが、ハブからプーラーでタイロッドエンドを分離します。
ローバーミニ:ステアリングのガタ付き修理。タイロッドエンドを交換する。~前編~
ローバーミニ:ステアリングのガタ付き修理。タイロッドエンドを交換する。~後編~
ハブからタイロッドエンドをプーラーで分離できたら、ハブのボルト穴からボルトを抜く前にタイロッドエンドの固定ナットとタイロッドエンドを緩めておくのがいいですね。タイロッドエンドと固定ナットが共締めになっているので2つのレンチを両手で持って緩めるのですが、そのときタイロッドエンドがハブにくっついている方が動かないので緩めやすいです。
組み戻すときには再度トー角調整をしないで済むために、タイロッドエンドを抜く前に元の位置を正確にマーキングしておくか、タイロッドエンドを回して抜くときに何回転(ねじ山を何山)したか覚えておいた方がいいですね。
そしたらラックエンドブーツを抜き取ります。ブーツは手前と奥の両端が抜けないようにタイラップで固定されているので、これをニッパーなどで切ってしまいます。金属製のホースバンド的なもので留まっている場合は無理に切らずに緩めて外したほうがいいかもしれません。まず下の画像のように手前のタイラップは目の前に見えているので問題ないですね。
奥のタイラップはホイールハウスに頭を突っ込んで車体裏からラックエンドを見上げないと直接見えないですが、僕は極力車の下に潜りたくないのでスマホのカメラをインカメにして(鏡の代わり)タイラップの位置と状態を確認し、あとは手探りで切りました。ちなみに水滴がついているのは雨の中を走ってきた後だからです。オイル漏れとかじゃありませんのでご心配なく。笑
固定用のタイラップを切ればあとはブーツを引っ張れば抜けます。もしタイラップで留めていた部分が経年でくっついているようならブーツをグリグリ捻って回転させて外します。最初に書いておけばよかったですが、ここまでの諸々の作業はステアリングを右に切っておくと、作業している左側のタイロッドが手前に飛び出ている状態になるので奥に手を突っ込む必要がなく作業しやすいです。
次回の続きではラックエンドブーツを外して、難関であるタイロッドエンドの取り外しをしていきたいと思います。