今回は車検に向けてローバーミニのアライメント、具体的にはタイロッドエンドの長さによってトー角の調整と測定を行なっていきます。DIYでは測定機器がないので下げ振り方式で簡易測定を行います。
この前に車検に向けて大きく車高をいじったのと、まだブログにアップしてない記事もありますが、消耗したタイロッドやタイロッドエンドを交換したのでアライメントは前回の車検からガラッと変わってしまっているはずです。車検ではこれがサイドスリップ検査として測定されるので、アライメント調整を行います。これもまた面倒な作業なんですよね。。笑
前回までの車高調整の記事はこちら。
このページのもくじ。
大きく車高を調整したり、足回りのゴム部品類がヘタってくるとアライメントは変わってしまう。
ローバーミニの場合、純正状態の足回りでアライメントが変わる要素はいくつかあります。大きなところでは、
- 車高が変わる(ハイローの調整やラバコンのヘタり)
- テンションロッドブッシュの厚みが変わる(締め具合やブッシュのヘタり)
- タイロッドエンドの長さが変わる(アライメント調整時はこれを調整)
これらが総合的に合わさってアライメントが決まります。テンションロッドやロワーアームを調整式に交換しているとさらに変数が増えることになりますね。
ちなみにフロントをジャッキアップするときにタイヤをフロント側からよーく見ながら車体を上げていくと、車体が上がってサスペンションが伸びていくにつれてタイヤがどんどんトーインの方向に向いてくるのがわかると思います。これはタイヤが上下する際にアッパーとロワーアームが上下にスイングするのと同時にテンションロッドとタイロッドも動くのですが、その際テンションロッドとタイロッドがハブを押してタイヤの角度を変えてしまうんですね。若干車高を上げたときも同様に、車高調整をするとわずかにアライメントが変化するということです。なので車高をいじったら本来アライメントも同時に再調整が必要です。普段乗りであれば若干の車高変更そこまでシビアになることはないかもしれません。でも車検の際はシビアに見ておかないと落とされます・・・。
調整にあたっては純正で乗ってる場合はアライメント調整できるのがトー角だけなので、タイロッドエンドでアライメントを調整することになります。
DIYでアライメントは測定できるの?今回は下げ振り方式で簡易的な測定を行う。
ということでタイロッドエンドを伸ばしたり縮めたりしてトー角を調整していきます。調整作業自体はそれほど難しくなくできるのですが、問題は”狙ったトー角になっているか測るのが難しい”ということです。セッティングは数度の角度までなので目で見て判断はできないですし、専用の測定器を買うと高価です。しかも車検は1m進んで5mmしかサイドスリップをしてはいけないというシビアな基準なので、適当な設定では通りません。車検に通すという目的だけに関していうとサイドスリップの簡易的なテスターが9,000円ぐらいで手に入ります。それを買うのが良いのかもしれませんが、簡易テスターなので精度がどこまで期待できるのか不安ですし、あんまりお金払いたくない気持ちもあります。
ということで精度は甘いですが、一番簡便な”下げ振り式”で測定をしたいと思います。「なんやねんそれ」と言いたくなるかもしれませんがめちゃくちゃ原始的な方法で、要はタイヤの前後にまっすぐ糸をかけ、左右タイヤの前側の幅と後ろ側の幅をそれぞれ測定するという方法です。タイヤの前と後ろでそれぞれ左右タイヤ間の距離が一緒であれば、理論上タイヤはトー角0°、つまり進行方向にまっすぐでサイドスリップ0ということになります(正確にはキャンバー角もサイドスリップに影響するので0にはならないと思う)。
「なるほど、いいじゃんそれ」
と思うかもしれませんが、そもそもタイヤに対して糸をまっすぐかけられるわけではないので数mmの誤差は出ます。数mmならいいじゃんと思いますが、測定基準も1m進んで5mm以内なので同じくミリの世界。なのでこの測定で確約まではいかないかもしれません。それでもやれることはもちろん事前にやっておきます!
まず下げ振りを作ります。これは糸の先にオモリがついた単純なものですが、建築用の既製品を買うとオモリの先端が測定針になっていてより精度高く測ることができます。ただ既製品を買わずとも簡単に作れるので僕はDIY。一般的には糸の先に海の投げ釣りで使う六角のオモリ(重量があり、紐を結ぶワッカもあり、さらに先端が若干尖っているので測定メモリを読みやすい)を使うのですが、僕は元・根っからの渓流フィッシャーなので海用の重たいのなんか持っていません(中学の頃海釣りもやってたので実家にはあるかも)。よってルアー制作用に持ってたのはガン球のみ。仕方ないので釣り糸とガン球(一番重かった3B)で作ります。
作りますと言っても簡単で、実車のタイヤに糸をかけながら長さを測り、その糸の両端にオモリを挟むだけ。オモリは抜けやすいので結目を作って抜けづらくしておきました。これを2セット作ったら下げ振りの完成。それとメジャーも必要です。メジャーも布製メジャーなんかだと長距離は曲がってしまって精度が下がるので金属メジャー(昔からの、あの巻き取りする時に手を切る危険なやつ)が必要です。そしてローバーミニだと1.5mあった方がいいですね。
車検向けにめっちゃ車高を上げた状態で測ってみたらだいぶトーインがキツい。これだとおそらく再度スリップ検査に通らない!
とりあえずタイロッドエンドの調整前にまず現状を測ります。もちろんハイローキットの車高は上げた後です。タイヤの多くは進行方向縦に溝が入っているはずなので、そのうちの1本に下げ振りをかけます。ちゃんとタイヤの溝にしっかり糸が入っているか確認しつつ、ここが測定精度が下がるポイントなのですが、なるべくタイヤの溝の中心に糸が通るよう調整します。完璧は無理なのでタイヤ前後から見た感じです。これを左右両方のタイヤにかけたらメジャーを取り出します。
メジャーで左右タイヤにぶら下がっているオモリの間隔を測ります。地面にメジャーを引いて測るので、できればガレージのコンクリ面のように地面が均されている方がいいです。傾いた土地で測るとズレる可能性があります。
まずタイヤの前方を測っていますが、メジャーというのは測定対象物の角に引っ掛けやすいように0cmのところになんというかフックがあります。これが地面からメジャーを浮かせてしまうので、僕は10cmの位置をゼロ点と置き換えて測ることにしました。それとズレるので地面に養生テープで固定しています。それで反対側のタイヤまで伸ばしていきつつ、改めてメジャーが真っ直ぐになっていることを目で確認してから測定します。
カメラの位置が悪く、タイヤの溝の中心を糸が通っていないように見えますが実際はなるべく中心に合わせています。これで測定したオモリの間の距離を記録。同様にタイヤ後ろ側のオモリも測定しました。ちなみにつゆだく(うちのローバーミニ)の場合はオーバーフェンダーで幅広タイヤ履いているので、ナローフェンダーのミニとは全く距離が異なります。
最初の測定では、
- 前1373~4mm
- 後1388~9mm
- つまり前後差はトーイン方向に15mm
ということです。大きいですね。この差を±5mm以内ぐらいで設定していきます。ちなみにローバーミニは数ミリトーアウト気味に設定するべしと言われるようで、それに乗員が乗って車高が沈むと0°ぐらいになるという感じのようです。実際はラバーコーンやスプリングの硬さにもよって違うので、0°目指すぐらいの調整が車検にはいいと思います。ただ僕は道幅が狭く巡航速度が高い幹線道路や高速を走ることも多いので、運転しやすい若干トーインが好みです。。
タイロッドエンドの調整は左右を均等に、慎重に行わないとステアリングセンターもずれてしまう。
とりあえず15mm差異はトーインがキツすぎてサイドスリップに引っかかりそうなので、なるべく0°近くに調整を試みます。タイロッドエンドは車体のフロントをジャッキアップしてステアリングを目一杯回すとタイヤを外さずに調整できるらしいです。右タイヤを調整するならハンドルを左に切っておいて右側のタイロッドエンドを車体外側に出しておくということですね。
でもオーバーフェンダーと幅広タイヤだとホイールアーチからの作業スペースがなく、逆に時間がかかりそうなのでタイヤを外して調整しました。車検場で落ちて駐車場でこの調整作業はやりたくないですね・・・。タイロッドエンドの調整方法は、タイロッドエンドのロックナットを緩めたのち、タイロッドそのものを回転させてネジ部分の長さを調整します。タイロッドの片側はタイロッドエンド、もう反対側はボールジョイントなのでくるくる回せばタイロッドエンドのネジ差し込み具合を調整できるという仕組みです。
ただ手では回らないぐらい硬いので(回るとしたらボールジョイントがガタガタで要交換です)、バイスプライヤーでタイロッドエンドを固く掴んで回します。せっかく先日タイロッドを新品に交換したばかりなのであんまり傷つけたくないなぁと思い、今回は布越しにプライヤーでつかんでいます。
それとめちゃくちゃ大事なのが事前のマーキング。タイロッドはただの棒なので1回転したのか0.8回転したのかよくわからなくなります。なので必ず回す前に白ペンやテープ貼ってペンでマークするなど、回転基準位置を明確にしてください。これを忘れて回し始めちゃうとかなり面倒なことになります。。僕は養生テープにペンで線を引いて、線が上に来るようにテープを巻き付けました。これで回していきますが、車体の左右で回転数は均一に回してください。でないとステアリングセンターがずれます。。
それとクリップでステアリングラックエンドブーツをガッチリ止めている場合はいったんはずして緩めます。でないとタイロッドを回した時にブーツがねじれていってしまうからです。タイラップ留めでねじれずに回るならそのまま作業して大丈夫。
1発の調整で決めるのはほぼ無理なので2回目で調整完了を狙います。とすると1回目はわかりやすく左右を2回転ずつ回してみました。トーインだったものをアウト方向に調整するので、つまりタイロッドは短くなるようにねじ込みます。
測定誤差もあるのでなるべく±0mmを目指す。ただしぴったりを目指すと複数回ジャッキアップして調整して下ろして測定の繰り返しは覚悟が必要。
そしてこれもめちゃくちゃ大事だと思うのですが、左右のタイロッドエンドをそれぞれ調整してジャッキから下ろしたときに、そのまま測定はしない方がいいです。車高調整して測った時と同じで、ジャッキアップして下ろすとタイヤの設置が内側に偏り、車高は若干高めに、トー角は若干イン目に出てしまいます。なので車検と同じ状態にするべくジャッキから下ろしたら一度ミッションをNに入れて前後に車体を押してタイヤを転がして地面に慣らします。この状態でようやく先ほどの下げ振り測定。
その結果、アウトになりすぎました・・・。ただそれでも良くて、今回わかったのが”左右2回転ずつタイロッドを回すと、大まかに前後タイヤ間距離が26mm差だけ動いた”ということ。つまりタイロッド左右1回転あたり、約13mm変化があるということですね。ただ13mm/左右1回転ずつというのはつゆだくだけの値だと思います。同じBSCCやスポーツパックだとしても、若干異なるかもしれませんので悪しからず。そしてこれがわかれば2回目の調整で0°に近いぐらいに持っていけるはずです。
で、もう一度ジャッキアップから今の作業をもう一周すると(これだからアライメントとかは調整に時間がかかる・・・)、
- 前1376mm
- 後1374mm
- つまり2mmトーアウト
ということになりました。狙った若干のトーインではないですが、車検に向けてちょっと作業時間がなくなったため今回はこれでいきます。僕が乗った状態で検査コースを通るので重みでどちらかというとトーイン方向に働くはずです。ちなみに差が何mm以内だったら車検通るのかというと、それはトー角だけではなんとも言えません。根拠はないですがネットで見かけた参考値は±5mm以内に前後差が収まっていればいいだろうと書いてありました。ほんとかな?
ちなみにそもそもステアリングのガタつきがあるとこの測定も怪しくなってくるので、あまりガタつきがあるようならそもそも修理した方がいいかもしれません。
せっかくなので最後に試走テスト!車高を上げただけでも案外乗り心地が変わったかも?
いやーアライメント調整も結構大変なんですよ。タイロッド回すだけでもジャッキアップしてホイール外してタイロッド回して下ろしてから慣らして測定、これを何回か繰り返して狙ったアライメントにしなければならないので時間がかかりがちです。ということは車検場に行ってこれで引っかかると自分で調整するにも時間がかかる、もしくは近隣の工場で調整してもらうと高い金額がかかるということです。なのでこれは検査落ちたくない・・・と考えて事前になるたけ調整しておくのが良いと思います。
それと試乗に行ってみるとなんとなく乗り心地が良くなったような感じがありました。車高を上げたことがその要因ですが、でもスプリングやショックアブソーバーを変えたわけではないし、元々バンプストップラバーにガンガン当たっているような状態でもなかったはずなので乗り心地が変わることはないと思うのですが、、、気のせいかもしれませんがやわらかくショックを吸収する感じが強くなりました。
アライメントに関しては若干トーアウト設定なのでフラつくとまではいきませんが、両手でハンドルを持っておきたいぐらいには轍にピーキーですね。うちは子供を乗せて嫁が足に使っているのもあるので、やはりもうちょいトーインが好みです。それと僕も旅行に高速乗った時に直進安定性が低いと運転疲れます・・・。
全体的に走りがガラッと変わってしまったほどではないですが、視界は明らかに高くなった感じがありますね。エアサスのめぇ(うちのパナメーラS)はボタンひとつでサスペンションセッティングを変えることができて、スポーツプラスモードまで入れると車高が20mmダウンします。それを信号停止中に車高を下げるとよくわかるのですが、視界が結構低くなるのと前に停車している車の下の方まで見えるようになります。高々2cmの高さの変化ですが、結構変わるもんだなぁというのが実感です。ちなみに20mm下がると外から車を見てスポーティ度も結構大きく変わります。やっぱりローダウン効果って大きいですね。
そしてつゆだくは今回平均3cmぐらい車高を上げたわけですから、そりゃまぁ視界も変わるよなという感じ。一応軽く試走した後もう一度測定して大きくズレてないことだけ確認しておきました。これでサイドスリップ検査を通ることを願うばかり・・・。