今回はローバーミニのステアリングガタつきの原因としてメジャーな、ステアリングラックブッシュの交換をDIYでやっていきます。前回までに難所であるタイロッドエンドのボールジョイントを外して古いブッシュまで外してきました。今回は最後に新しいブッシュで組み立てて作業完了です。
前回までの記事はこちら。
このページのもくじ。
新しいブッシュを取り付ける。ラック内の溝にツメをしっかり差し込むだけでここからは難しい作業ではない。
ラック内部の古いグリスを拭き取り、軽くパーツクリーナーをかけて綺麗にしたあと、新しいブッシュにモリブデングリスを塗って差し込みます。ブッシュは外周3箇所のツメがある製品とない製品がありますが、97年ミニはツメがあるものを使います。外したのと同じ向きで、ツメがある方が手前(車体裏の外側)になるように押し込めば大丈夫です。
押し込むといってもすんなりは入りません。ツメがラックの筒に引っかかります。なので両手で3箇所のツメ部分をギュッと内側に潰すように力を入れつつ筒に押し込むと入ります。この時ブッシュ内径の円がおにぎり型に崩れてしまいますが、この時点では気にする必要ありません。そのまま押し込みます。
筒の内部にある溝にブッシュのツメが落ちれば定位置です。下の画像のようにステアリングラックの入口から1cmぐらい奥に1周溝があります。ここまでブッシュのツメを押し込めば自然と変形が戻る力で溝にツメが入ります。
定位置に入ったのが下の画像。こんな感じでブッシュ内径が正円に戻ったらちゃんと定位置になっているので問題ありません。
そしたらさらにモリブデングリスをブッシュの内側に塗っておきます。指にグリスをとって丁寧に塗り込みます。ここはこの後ステアリングコラムシャフトが出てくるので、グリスのチューブをそのまま押し込んでグリスをぎゅうぎゅうに詰めたらダメです。ついいっぱい詰め込めばいいみたいな考えになりがちですが注意。
ステアリングコラムシャフトと接地する部分なので非常に重要です。きれいに古いグリスを掃除してブッシュを組み込んだ後に、新しいグリスを入れ忘れると摩擦が大きくてブッシュの磨耗が激しくなるので要注意。
その後よーく手を拭いてステアリングシャフトを戻すべく、ゆっくりとハンドルを右に切っていきます。するとステアリングシャフトがブッシュに引っかかるポイントがあるのですが、そのままゆっくり回せば引っ掛かりを超えてブッシュからシャフトが出てくるはずです。
さっき塗ったグリスがどうしてもシャフトの先端に付いてきてしまうので、これはペーパーで拭き取ります。
あとはタイロッドから先を組み戻すだけ。ここまできたらほとんどゴールですね。
タイロッドのボールジョイント部を元に戻す。カシメが元の溝まで入ればしっかりと固定される。
組み戻しで唯一気をつけるポイントはタイロッドボールジョインド部のねじ込み。分解の時に苦労したカシメを元の位置に戻す必要があります。下の画像は分解した時の画像ですが、まず車体裏シャフト側の切りがきの位置をチェックしておきます。
そしてもう一方のハウジング側。こちらにカシメがあります。まぁ単純に手でグルグルねじ込んでいって、最後にバイスプライヤーで掴んでグッと回しておきます。
不必要な力で回す必要はないので、グッと力を入れて締めたら車体の裏側からカシメが溝に入っていることを確認します。溝に入っていたらOKです。それ以上力を入れて回しても意味がないのでこれで止めておきます。
そしたらもう一度グリスアップポイントがあります。先ほど掃除しておいたタイロッドのボールジョイント部分にもモリブデングリスを入れておきます。見えている部分に塗ったらタイロッドをグルグルと動かして中までグリスが渡るようにします。ここは軸自体が回転する箇所ではないのでドライブシャフトのようにグリスでベショベショにしておく必要はありません。
グリスアップも完了したらブーツで汚れが入らないようにカバーします。
今回は訳あっていったん古いラックエンドブーツを再度取り付ける。もしかしたらステアリングAssy交換になっちゃうかもしれないので。。
元々はラックエンドブーツも新品に交換する予定だったのですが、ガタつきの原因がブッシュではなくタイロッドのボールジョイント、そしてもしかしたらステアリングラック内のスプラインあたりも怪しいと分かったからです。スプラインが磨耗してしまっているならステアリングラックごと交換することになり、そうでなければタイロッドだけ交換すべきなのですが、現時点で判断できないことからいったん元々のラックエンドブーツを戻したということです。もしステアリングラックAssyで部品を購入すると新しいブーツも付いてきているので、今新しいものに交換しても無駄になるという考えです。
とはいえ古い固定バンド、というかタイラップは切ってしまったので新しいものを使います。タイラップは100円ショップでも売ってますが、ある程度長さが必要なのでホームセンターなら確実に長さのあるものが売っています。
奥側の固定がしづらいので、ブーツを履かせる前に緩めにタイラップをブーツ端に取り付けておきます。この状態でラックエンドにブーツをはめたら、タイラップをぎゅっと絞って余分を切ります。しっかりと正しい位置で留まっているかは目視して確認するしかないので、車体の下に頭を突っ込んで見るかスマホのインカメで撮影してしっかり固定されていることを確認しました。
ブーツの手前は元々タイラップで固定されていましたが、新しいブーツセットにはクリップホースバンドがついていたのでこれを使うことにしました。クリップ式は再利用可能ですからね。
クリップはつまみをギュッと縮めるとバンドが広がってブーツに差し込むことができます。指では硬そうだったのでペンチで掴んでブーツの端に差し込みます。このブーツの細い方はタイロッド上でも一段細くなっている部分に合わせます。
これでタイロッドエンドを戻します。タイロッドエンドは元々記録していた回転数で元の位置固定すればタイロッドの長さは変わらずアライメントが崩れないはずです。あとはタイロッドエンドをハブに固定して30Nmのトルクで締めたらタイヤを戻して終了です。これで試走にいってみましょう。
やはりステアリングのガタつきは直らず。でもブッシュは摩耗が少なかったように見えて、交換してみたら案外改善効果があった。
まぁ正直古いブッシュを取り出した時点でガタつきの大きな原因になっていないことが明らかでしたし、摩耗もそこまで大きいようには見えなかったのでもしかしたら何もステアリング感覚に変化がないかもしれません。とはいえ走ってみないことにはわからないので、手をきれいに洗ったら走りに出ます。
家の近辺の試走なのでそれほど色々な道は走りませんが、深夜で空いている大通りを車線変更で車体を揺すってみながら走ってみました。轍も超えてみてハンドルの取られ具合などもみてみます。結論としてはガタつきの根本改善にはなりませんでしたが、それでも思ったよりガタつきが小さくなったことがわかるレベルでした。
感覚的には「ステアリングの反応が良くなった!」みたいな明確な変化ではないものの、道路の轍によって流される前輪の反応がステアリングに伝わってきやすくなりました。スポーツパックなどの97年以降の一部限定車は幅の広い13インチタイヤを履いていますが、これがまた路面の影響を受けやすく特に深い轍にかなりハンドルを取られます。今回ブッシュの交換によってわずかながらもステアリングラックの軸と軸受けのアソビが小さくなったことで、ステアリングの反応がダイレクトになったということです。
今回はステアリングラックブッシュを第一容疑者として疑った交換作業でしたが、ガタつきに大きな影響を及ぼしていたのはタイロッドとステアリングラックを接続するボールジョイント部分でした。
これ画像ではぴったりのように見えますが、実際はガタありです。ラックに接続された状態で、たとえ(重みのある)タイロッドエンドがついた状態だったとしても、タイロッドから手を離したところでボールジョイントはタイロッドの角度を維持するのが正常です。つまりタイロッドから手を離したときにタイロッドが自重でストンと下に倒れてはダメだということ。それぐらい正常状態のボールジョイント部は動きが固いそうですね。
つゆだく(ローバーミニ)のボールジョイントはスルスルと動くので、もちろん手を離せばタイロッドが重力で勢いよくガタンと下に落ちます。さらにタイロッドを掴んでラックエンドに対して手前奥方向に揺すってみるとカタカタと動くぐらいに隙間があります。この隙間の分だけハンドルとタイヤの間にはガタつきが出るということです。1mmもないボールジョイントのカタカタですが、実際はステアリングでいうと現在20°はアソビが出てます。。
さて、つまりこのボールジョイントとタイロッドがセットになった部品を交換しなければならないのですが、もう一箇所怪しいところがあります。それはステアリングコラム(つまりハンドルから床に伸びる回転軸)とステアリングラックを接続するスプライン部分。ギザギザの細かい溝が噛み合うようにして接続されているのですが、これのステアリングラック側が摩耗していたらステアリングラックAssyで交換が必要です。となるとタイロッドもセットで付いてくるので、もし今タイロッドを単体で購入して交換しても、後からAssy交換することになったら部品が無駄になります。なのでAssyで購入するか、タイロッドのみを購入するか判断するためにまずはステアリングコラムを分解し、スプラインの状態を見てから判断したいと思います。